Very last night,Very last hours.


あともう5時間で成田行きの飛行機に乗り込む
…なのに、まだWhistlerからVancouverに戻る途中

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曇天の夜空
旅の終着地Whistlerでは
満天の星空を期待していたのに
星々は厚い雲の上

街頭もない
真っ暗な夜の闇の中
私たちの乗る車のヘッドライトだけが強い光を放ちながら
針葉樹林の影を横切り移動してゆく

天に顔を向けてよおく目を凝らすと
雲の柔らかい線や厚みが手に取るように分かる
どんなに暗い闇の中でも
光の粒は世界を静かに包み込んでいる

時折雲の切れ間から顔を出す月に
「最後に星空を見せてください」と
お祈りをしつづけたのがよかったのか

厚く空を被っていた雲が切れ始め
ふと気がつくと、少しずつ星達が顔をのぞきだした

車を止めてシートを倒し
オープントップの天井から
無言で漆黒の夜空を眺める

時折聞こえる狼の遠吠え以外は
無音の世界

雲の流れる音が
ゴォゴォと聞こえそうなくらい
星の瞬く音が
シャラリンシャラリンと聞こえそうなくらい
静かな夜

ゆっくりと、ゆっくりと
温かい無言の時間がすぎてゆく

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17日間の旅行があと数時間で終わろうとしている

逢いたい人たちに逢いに行く旅
再会したい景色に逢いに行く旅

誰かが逢いたいと待っていてくれる旅
逢いたい誰かが大好きな景色や
人とその感情を少しおすそ分けしてくれる旅

こんな旅を巡ることができた幸せな気持ちと
過ぎ去った景色たちや
一人一人の顔が瞼の裏に流れてゆく

感謝の気持ちで胸がいっぱい

そして、いつか
誰かが私の住む日本に遊びに来たいと言って
私のいる世界に旅をしにきてくれたら
私のお気に入りをちょっとだけおすそ分けできたらいいな

何ともいえない柔らかい気持ちで
山の速い雲がすっかり流れきった
満点の星空を静かに眺め入る

さぁ、そろそろ大好きな日本に帰ろう